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2025.01.05
NEIGHBORS
北海道は、言わずとも知れた国内有数の米どころ。丹精込めて育てられた稲からとれるお米は、札幌市民はもちろんのこと、雪国に暮らす道民にとって大切な生命線です。
さかのぼること約150年、北の地が切り拓かれはじめた頃、極寒の地での米づくりは“不可能”とされていたとか。そのような向かい風が吹く中でもめげず、たゆまぬ努力の末に誕生したのが、寒さに耐えうる強い稲「赤毛種(あかげしゅ)」です。
札幌市近郊の地域、現在の島松沢(北広島市島松)で稲作を成功に導いた中山久蔵(なかやまきゅうぞう)氏がその種を無償でくばったことが功を奏し、のちに全道各地で稲作が発展。今や北海道を代表する「ゆめぴりか」などのルーツは、この「赤毛種」にあるのです。
そんな北の大地で育つ稲は、“北海道”という土地でしか育つことのできない特別なもの。
「北海道はこれだけ水が豊富で四季があり、稲が育つにはすばらしい環境です。遺伝的な形質上、この気候帯でしか作ることのできないよさと誇りがあるんですよ。」
そう熱を込めるのは、札幌に根付く“まちの米屋”として歩みを重ねてきた「千野米穀店(ちのべいこくてん)」の3代目、徳永 善也(とくなが よしなり)さんです。
昭和中期頃のお店。徳永さんはこの店舗の2階で産まれたという
1939(昭和14)年、「千野米穀店」は徳永さんの祖父にあたる千野善松(ちの ぜんまつ)さんによって現在の東区で創業。第二次世界大戦が起こる少し前、札幌のあちらこちらで米屋が開かれる動きが活発になっていた頃のこと。当時雑貨屋で働いていたという善松さんは、半ばその流れに乗るようにして事業をおこしたのでした。
当時の精米の様子
精米やお米の配達に勤しむ大人たちの姿を間近で見ながら育った徳永さん。幼い頃はあまり深く考えずに“米屋になりたい”と口にしていたといいます。
その後は、小樽の短期大学へ進んだのち食品会社への就職を選択。数年かけて営業としての技術を磨き、“商売のいろは”を教わっていくうちに“やはり自分は米屋なのだな”という自覚が徐々に芽生えていきました。
“米屋はこれから先がない。食べていけないぞ”と祖父から止められてもなお、“自分でやりたいからやるんだ”との強い意思を曲げることなく、家業である「千野米穀店」への入社を決意。2000(平成12)年には代表に就任し、3代目としてお米のおいしさをより多くの方に伝えながら、のれんを守りつづけています。
「マルヤマクラス」の一階にかまえる「円山精米所」は、ひらけた空間で立ち寄りやすい
2016(平成28)年には、地下鉄「円山公園」駅直結の商業施設「maruyama class(マルヤマクラス)」に、3店舗目である「円山精米所」をオープンさせました。
「千野米穀店」が創業当初から一貫して大切にしているのは、“おいしいお米を届け、お客さまに喜んでいただくこと”。お店には、徳永さんが信頼する方の紹介で繋がりができたという生産者のお米が並びます。
「土地の要素もありますが、最後はやっぱり“人”なんですよ。人柄は、お米や田んぼに表れる。僕が選ぶ生産者は“他人と比べてどうか”ではなく、“自分が大切にしたいことを大切にする”そんな信念をもっている方ばかりです。きっとお米の神様が出会わせてくれているんじゃないかな。」と、屈託のない笑顔で話してくれました。
「円山精米所」では、北海道米を中心に生産者や生産地限定の品種を常に20種類以上取り揃えているとのこと。商品のほとんどを玄米で用意し、透明の袋に入れて中身が見える形で販売しています。
「お米の良し悪しは、実は玄米の状態で見るのが一番なんですよ。」
色味はもちろん、粒が均一であること、黒ずみや割れたものが少ないことが品質の高い米には欠かせない条件です。
精米されてしまってからではわからない、逃げも隠れもできない状態で質のよいものを届けたい。そのような考えをもつのは、五ッ星お米マイスター、お米アドバイザー、ごはんソムリエなど、お米に関する数々の顔をもつエキスパートの徳永さんだからこそ。
「僕はずっとお米のアレルギーや研究に関わっていて、研究者や生産者との繋がりもある。だからこそ、玄人(くろうと)が見ても納得できるようなお米を出したいんです。」と、おいしいお米を提供することに妥協はありません。
精米の様子。新米の時期などお米の水分量で固さが変わる時には、削り具合を調整するという
日頃から玄米に親しんでいる方はそのままでももちろん、好みに合わせて分づき米から白米までスタッフがその場で精米をしてくれるため、“精米したて”を持ち帰ることができます。
2024年「米1グランプリinらんこし」で準グランプリに選ばれた北竜町の黄倉(おうくら)さんの「ゆめぴりか」を精米したもの
“削ること”と思われがちな精米ですが、徳永さん曰く「精米は、おいしさや香り、栄養のある部分を“残す”こと」なのだそう。3分づきはきわめて玄米に近く、7分づきだと白米に近い風味。その中間の5分づきは胚芽や糠(ぬか)がまだ少し残っており、良質なお米であれば甘みや旨みを感じることができるため、この5分づきを選ぶ方も多いようです。
北海道で生まれた品種の一部。旅のお土産やギフトにもぴったり
旅行者の方にまず食してほしいおすすめを尋ねると、「ぜひ、『ゆめぴりか』を召し上がってください。コンテストでさまざまな品種が出品されていますが、抜きん出て素晴らしい。北海道のお米は、一つひとつの品種にしっかりと特徴があるんですよ。これがもう本当にすごいことなんです。」と、教えてくれました。
「円山精米所」では、持ち運びやすいように3kgずつ袋詰めされて販売されているのが基本ですが、精米は1kgから受け付けているそう。気になった産地や生産者、品種名など惹かれたものを2〜3種類食べ比べてみると、きっと北海道のお米それぞれのもつ風味や粒の立ち方、食感のちがいが楽しめることでしょう。
「千野米穀店」が開発した「満福庵 海鮮つくだ煮」
そして、よりいっそうお米のおいしさを引き立ててくれるのが、“ごはんのおとも”。店内でもひと際存在感を放つ「満福庵(まんぷくあん)海鮮つくだ煮」は、北海道産の鮭節や帆立、あわび、昆布を使い、美唄(びばい)産の醤油で仕上げた徳永さんが自信をのぞかせる逸品。こうしたオリジナルのおともは、お米を知り尽くしているからこそ生み出せるものなのです。
どこか少年のような天真爛漫さをまとっている「千野米穀店」3代目、徳永さん
徳永さんが人とのご縁を大切にお米を届けつづける背景には、学生時代の経験が大きく関わっているのだとか。大学生の時には休学し自転車で日本を縦断、その後は海外にも足を伸ばしさまざまな景色や人との出会いを経験してきたといいます。
そんな徳永さんの原風景は、モンゴルの大草原から眺めた地平線。あの時感じた「この先には何があるのだろう......?」という興味や好奇心の強さは、今も健在。自身を形づくってきた数々のご縁に対する感謝の気持ちを、絶やすことはありません。
今も支えにしているという、就職先で授かった「商売は、“人の機微”に触れること。」という言葉。そして「人のやらないこと、人のやれないこと、人のやりたくないことをやりなさい。」と励ましてくれた祖父からの言葉。
その2つを変わらぬテーマに掲げ、札幌や北海道を代表する良質なお米を届けるべく、徳永さんは力強く邁進しつづけます。
千野米穀店(円山精米所)
住所:北海道札幌市中央区南1条西27丁目1−1 マルヤマクラス 1F
電話番号:011-688-8158
アクセス:地下鉄東西線「円山公園駅」直結
HP:https://chino-grain.co.jp/
SNS:https://x.com/chinobeikokuten
https://www.instagram.com/chinograin/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。